愛らしい子熊のキャラのイラストが印象的な漫画家・イラストレーターの西村ツチカさんが描いた、宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』をもとにした漫画『なめとこ山のクマ』(同人誌『民民』の創刊号に掲載)。
この同人誌は、風土によって育まれた死生観や文化、そこへ近代という時代が合わさることで生まれた近代文学を、現代の漫画で表現するとしたらどうなるか。
そういった試みのもとに創刊されたようで、装丁も、どこか懐かしい、レトロなデザインとなっています。
複数人の漫画家さんが選ばれ、夏目漱石や小泉八雲などが原作の漫画版が掲載されているのですが、その最後がツチカさんの『なめとこ山のクマ』です。

生活のために申し訳ないと思いつつも熊を殺さねばならない猟師の小十郎、ところが彼も熊によって命を落としてしまうことになります。
また熊たちにとって小十郎は親しみを覚える存在で、最後も決して彼を殺すつもりはなく、小十郎の死に際し、熊たちが死者を送る祈りの儀式のようなことも行います。
その栗の木と白い雪の峯々にかこまれた山の上の平らに黒い大きなものがたくさん環になって集って各々黒い影を置き回々教徒の祈るときのようにじっと雪にひれふしたままいつまでもいつまでも動かなかった。そしてその雪と月のあかりで見るといちばん高いとこに小十郎の死骸が半分座ったようになって置かれていた。
宮沢賢治『なめとこ山の熊』
両者の運命の悲哀のようなものが伝わってくる童話。
ツチカさんの漫画版でも、そんな風に簡単にどっちがどうということも言えない人と自然との結びつきが、静かな調子で描かれています。